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量子コンピューターとは、近年需要が高まっており研究開発も活発に行われている、次世代の超高度計算を行うためのコンピューターです。この量子コンピューターを実用化させるためには、冷凍機が必須になります。
なんとなく量子コンピューターという名前を聞いたことがあり、かなり複雑な装置を使って極限環境まで冷やさなければいけないということをご存知の方はいらっしゃいますが、その深い理由まで知っている方は多くいらっしゃいません。
ここでは、実際に量子コンピューター向け高精度無酸素銅部品の加工を行っているアイジェクトが、量子コンピューターの概要から、量子コンピューターに極低温環境が必要な理由、無酸素銅が量子コンピューター向け冷凍機に多く使用されている理由まで、まとめて解説いたします。
量子コンピューターとは、量子力学で特徴的な波の性質を、情報処理に応用されたコンピューターのことです。
通常のコンピューターでは、最小単位がビットと呼ばれ、「0」か「1」の2択になります。一方で量子コンピューターでは、最小単位は量子ビットと呼ばれます。この量子ビットで扱われる粒子は、一度に2よりも大きい複数の状態を共存させて、かつその状態を保持することができます。もう少しかみ砕くと、0と1の重ね合わせた状態、0でありかつ1でもあるという状態をとることができます。この性質を重ね合わせと言います。この重ね合わせの性質を使うことで、超並列計算が可能になります。そのため量子コンピューターは、既存のスーパーコンピューターと比較して1億倍とも呼ばれる、非常に高度な計算を実現することができると考えられています。
このような特徴から、量子コンピューターは新薬開発や新材料開発、交通ルート最適化、金融分野、セキュリティ、気候問題などの、膨大な量のビッグデータの計算が必要な社会課題の解決のために開発が期待されています。
量子コンピューターには大きく2種類のタイプがあり、さらに量子ゲート方式は3種類に分類されます。
・量子ゲート方式
・超電導型:電子回路チップを極低温に冷却して量子ビットを実現
・イオントラップ型:磁場で空中浮遊させたイオンで量子ビットを実現
・冷却原子型:極低温に冷やした原子で量子ビットを実現。光ピンセットと呼ばれるレーザー技術が必要
・量子アニーリング方式(超電導):組み合わせの最適化が得意。
量子ゲート方式の量子コンピューターは、1990年代から研究開発が継続されており、実用化に向けて研究が進められています。また、上記の量子ビットや重ね合わせの性質を利用するのは、こちらの量子ゲート方式の量子コンピューターです。
イオントラップ型については、すでに商用利用に使用されている量子コンピューターもあります。しかし、量子コンピューターを用いて社会課題を解決するためには、量子ビットを増やして、さらに大規模な計算が可能となるようにしていく必要があります。その点では、イオントラップ型は量子ビットを大きく増大させるのは困難のため、現在は愛知県の自然科学研究機構分子科学研究所を中心に、冷却原子型の開発で日本が世界をリードしています。
この量子ビットの粒子に流動性を持たせて、量子ゲートの超高速計算を実現するためには、粒子同士が分離された状態(重ね合わせの状態)を保持する必要があります。しかしそのためには、外部環境などの「ノイズ」を限りなく除去しなければならず、1K(ケルビン)レベルの極低温環境を作らなければいけません。
そこで登場するのが、希釈冷凍機と呼ばれる特別な冷凍機です。よく量子コンピューターの写真で登場する銅色や金色で輝くものは、この希釈冷凍機です。
ちなみに、0ケルビンが絶対零度と呼ばれる温度で、原子や分子の運動が止まる状態の温度です。摂氏-273.15℃になるため、1Kは-272.15℃という極低温環境になります。
量子コンピューターを冷却するためには、冷凍機が必要不可欠となります。この冷凍機は、現在はヘリウム冷凍機が主流となっていますが、イッテルビウム磁性体による磁気冷却を用いた極低温磁気冷凍機の開発も進められています。このような冷凍機においては、金属部品の活用が必須になりますが、特に多く用いられているのが無酸素銅です。世界シェアの過半数を占めるフィンランドのブルーフォース社の希釈冷凍機も、金色に見えるため一見すると銅には見えませんが、実は金メッキされた無酸素銅で構成されています。
量子コンピューター向けの冷凍機で無酸素銅が多く使用されている理由は、熱伝導性にあります。
詳細は下記をご覧ください。
>>無酸素銅とは? 特徴・メリットと他の銅素材・純銅との違いについてご紹介!
>>低温・極低温環境で銅部品が使用される理由とは? 低温・極低温の違いについても解説
このほかにも当社では、低温機器向け銅部品の製作に関するポイントを解説しております。詳しくはこちらをご覧ください。
>>輻射シールドに高純度アルミや無酸素銅が採用される理由とは?
続いて、銅板加工.comがお客様からご依頼いただいて実際に製造してきた、低温環境下で使用される銅部品の加工実績をご紹介いたします。
こちらは、C1020製の低温装置用銅板プレートです。全体をマシニングセンタにて加工を行い、5か所の穴加工、手前2か所に関してはタップ加工を行いました。また、手前部分には溝加工も施しています。
こちらは、C1020製のプレートです。こちらのプレートはクライオスタットにて使用される高精度加工品です。旋盤にて軸精度の高い円盤形状の加工を行った後に、マシニングセンタにて溝加工、穴加工を行っております。
銅板加工.comを運営する株式会社アイジェクトは、無酸素銅をはじめとして、量子コンピューター向け冷凍機や輻射シールドなど、低温・極低温環境で使用される銅部品の加工実績が多数ございます。
また、銅素材に関するご相談や図面段階からの設計提案も至っております。
低温機器の銅部品加工でお困りの方は銅板加工.comまでお問い合わせください!