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低温・極低温環境で銅部品が使用される理由とは? 低温・極低温の違いについても解説

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低温・極低温環境で銅部品が使用される理由とは? 低温・極低温の違いについても解説

2021年09月04日

 

低温・極低温環境で銅部品が使用される理由とは? 低温・極低温の違いについても解説|銅板加工.com

低温・極低温環境下では、熱運動エネルギーが低下し、分子の熱運動や結晶内の転位運動が抑えられます。そのため材料の変形が抑えられますが、一方で破壊強度に至りやすくなり脆性が増します。そして、4Kのような極低温環境では、実は銅部品が多く採用されています。これは、主に低温環境での熱伝導率の高さや電気伝導率、ガス放出特性などの要因から銅が選定されており、極低温環境下での熱交換器や真空機器にも多く活用されています。

ここでは、低温・極低温に関する違いや、極低温機器の用途、低温・極低温下での各種材料の物性、そして低温・極低温環境で銅部品が使用される理由まで、まとめて解説いたします!

 

 

低温と極低温の違いとは?

一般的に常温とは、10~35℃前後の温度を指します。また温度の単位としては、熱力学で使用される絶対温度のケルビン(K)が、特に研究開発分野では使用されています。このケルビンで表すと、摂氏30℃は約303Kとなります。

そして、この絶対温度のケルビンがゼロになる温度を絶対零度と言い、0Kと定められます。先ほどの対応に合わせて、0Kはおよそマイナス273℃(-273.15℃)となります。

 

続いて低温、極低温という領域についてです。
極低温(きょくていおん・ごくていおん)という温度に正確な定義はありませんが、時代が進むにつれて低温領域の研究も進んでいるため、段々と極低温の範囲が小さくなっています。

 

・111K(-162℃): 液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)
・77K: 液化窒素(LN2:Liquefied nydrogen)温度
・20K: 液体水素(LH2:Liquefied hydrogen)
・4K: 液化ヘリウム(LHe:Liquefied helium)
・0.01K以下: 近年の物理学における定義:超低温とも呼ばれる

 

極低温環境下では、熱運動エネルギーが低下し、分子の熱運動や結晶内の転位運動が抑えられます。そのため、材料の変形が抑えられ、一方で破壊強度に至りやすくなり脆性が増します。また極低温環境下では、超電動や液化ヘリウムの超流動といった特殊な現象が発生します。

 

こうした極低温の定義の変化はありますが、近年では液体窒素や液体水素の20K付近までは工業的に使用されるため、工業的な極低温は77~4K程度まで、研究開発分野における極低温は4K以下というのが一般的な解釈とされています。

 

当サイトには4K対応という高精度部品に関するお問い合わせを多数いただいております。そのため下記からは、研究開発分野の4K以下の温度を極低温、77K~4Kを低温として進めていきます。

 

 

極低温機器の用途とは?

極低温環境で使用される極低温機器・装置としては、下記のようなものがあげられます。主にエネルギー、交通、電力、医療、宇宙分野で極低温機器が必要となります。

・液化ガス輸送
・磁気浮上鉄道(リニアモーターカー)
・超電導発電機
・超電導電力送電
・製鉄工業
・核融合炉
・高エネルギー加速器
・MHD(Magneto-Hydro-Dynamics:電磁流体力学)発電、磁気流体発電
・MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)
・NMR(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)
・宇宙望遠鏡
・ロケット
・宇宙関連機器

 

最近では、大型低温重力波望遠鏡のKAGRAが低温関連の実験として注目を集めています。実際、弊社で製作した高精度銅加工品も、KAGRAに採用されており、その実績をきっかけに多くの会社様より低温機器用の銅部品の製作に関して、お問い合わせをいただいております。

 

上記のように、極低温は主に超電導分野で採用されています。従来は、超電導現象を発生させるために、絶対零度に近い極低温環境を作りだす必要がありましたが、これには膨大な冷却コストがかかるという大きな欠点がありました。しかし現在では、マイナス196℃程度でも超電導状態になる高温超伝導という現象が発見されてから、冷却コストが減少し、様々な分野で超電導現象が活用されています。

 

ただ、現在実用化されている多くの超電導現象に関しては、いままで通り4K程度の極低温環境が必要となっており、現在も盛んに研究開発が行われています。

 

 

低温・極低温下での各種材料の物性

では、低温・極低温環境下ではどのように材料の物性は変化するのでしょうか。ここでは金属に限定して、比熱、熱伝導率、脆性特性に関して比較していきます。

 

低温環境での比熱

極低温下では、多くの金属の比熱は室温の約1000分の1にまで低下します。そのため4Kのような極低温環境では、金属にわずかな熱を加えるだけで金属材料の温度が急上昇するようになります。

 

低温環境での熱伝導率

低温環境におけるアルミニウムの熱伝導率は、A1100のような純アルミニウムの場合は、4Kでも50W/m・K程度の熱伝導率があります。ただし、低温環境下で熱伝導率の高さが求められるのは、熱交換器がほとんどです。この熱交換器では、液化や気化といった高い内圧がかかる環境下でもあるため、A1100のような強度が低い材料には向いていません。そのため、A5083のような高強度のアルミ材が使用されるケースが多くなっており、LNGタンクにもA5083が多く採用されています。

 

またステンレス鋼やチタン合金は、4Kで5W/m・K以下の熱伝導率と小さくなりますが、強度は保たれているため、低温環境下では構造部材として使用されるケースが多いです。

 

一方で純銅は、4Kの極低温下でも熱伝導率が100以上と非常に大きくなる貴重な材料です。そのため純銅は、低温環境下では熱交換器用の材料として活用することができます。ただし純銅が熱伝導率が高いのは、不純物が少ないため熱抵抗の散乱が小さいためです。つまり、銅に様々な金属を混合させた銅合金になると、熱伝導率が低下してしまうのです。そのためタフピッチ銅やリン脱酸銅は低温環境では熱伝導率が小さくなってしまいます。

 

低温環境での脆性特性

極低温下では、物質の熱エネルギーが損なわれ、変形しにくくなります。一方で、結晶構造によってはへき開面を持っているため、脆性破壊しやすい材料もあります。例えば鋼のような体心立方構造の場合は脆性破壊が起こりやすくなります。
一方で銅やアルミニウム合金(面心立方構造)、ステンレス鋼は低温脆性が発生しないため、構造体の材料としても使用することができます。

 

 

低温・極低温環境で銅部品が使用される理由とは?

 

4Kのような極低温環境では、銅部品が多く採用されています。これは、先述の通り、主に低温環境での熱伝導率の高さに起因します。純アルミニウムや純チタンも比較的熱伝導率は高い材料ですが、それでも純銅と比較すると10分の1以下となり、純銅が圧倒的に高い熱伝導率となるのです。

また銅は、加工性や電気伝導率、ガス放出特性なども優れているため、極低温環境下での熱交換器や真空機器にも多く活用されています。

 

>>銅の分類と7つの特徴をご紹介! ~有名な特徴から意外なものまで~

 

 

当サイトの高精度銅部品の加工実績をご紹介!

続いて、銅板加工.comがお客様からご依頼いただいて実際に製造してきた、低温環境下で使用される銅部品の加工実績をご紹介いたします。

 

事例①:低温装置用銅板プレート

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こちらは、C1020製の低温装置用銅板プレートです。全体をマシニングセンタにて加工を行い、5か所の穴加工、手前2か所に関してはタップ加工を行いました。また、手前部分には溝加工も施しています。

>>詳細はこちら

 

事例②:C1020製 クライオスタット向けプレート

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こちらは、C1020製のプレートです。こちらのプレートはクライオスタットにて使用される高精度加工品です。旋盤にて軸精度の高い円盤形状の加工を行った後に、マシニングセンタにて溝加工、穴加工を行っております。

>>詳細はこちら

 

 

低温機器向け銅部品の加工なら、銅板加工.comにお任せください!

今回は低温・極低温の定義から、銅が低温環境下で使用される理由までご紹介させていただきました。

銅板加工.comを運営する株式会社アイジェクトは、無酸素銅をはじめとして、低温・極低温環境で使用される銅部品の加工実績が多数ございます。

また、銅素材に関するご相談や図面段階からの設計提案も至っております。
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